鮒ずしは臭いのか
鮒ずしを初めて食べた時は本当に驚いた。
上品な酸味と何とも言えない奥ゆきのある風味。咀嚼するごとに滋味深い味わいがじんわりと口に広がり、日本酒を口に含むと相乗効果でまた違う世界観に魅了される。余韻がいつまでも心地よい。
おそらく手間暇かけて、ゆっくりじっくり熟成されてきたから、口に入れても余韻が長く感じられるのだろう。
その時以来すっかり鮒ずしのとりこである。
だがそれまでは鮒ずしと聞いても、鮒は臭いイメージで、わざわざ食べてみようとも思わなかった。知らないとは恐ろしい。実際は美味しいだけでなく、郷土色が感じられ、健康にも良い素晴らしい食文化なのだ。
鮒鮨の作り方
現存する日本最古の寿司が鮒ずしだと言われている。琵琶湖で捕れるニゴロブナを塩漬けし、炊いたご飯を重ねて漬け、自然発酵させる。魚の保存方法として伝えられたのが鮒ずしだ。
鮒ずしの楽しみ方
鮒ずしは基本的には薄くスライスしてそのまま切り身を頂く。まろやかにしたい場合には少しみりんを垂らしてみても良い。
また、鮒の周りの米も美味しく頂ける。捨てるなんてとんでもない。そのまま酒のつまみにしても良いし、おすすめは納豆に混ぜこんで、海苔に巻いて食べるスタイルだ。お好みで納豆の付属のたれや醤油で調味しても良いが、最近はヘンプシードオイルを垂らしてより健康効果をねらっている。我が家ではこれを「ふなっとう」と名付け夕飯の定番の1品となっている。
また、風邪など体調がすぐれない時に、切り身に熱いお湯をかけて飲むと良いようだ。夫の祖母も実践していたらしい。乳酸菌の作用によりおなかの調子も整えてくれる。発酵食は体に良いと散々言われているのだから、確かにものすごく効きそうだ。
鮒ずしと合うお酒
金亀
やはり滋賀の郷土食なのでここは滋賀のお酒を推したい。
インパクトがあったのは岡村本家の金亀だ。金亀の中でも純米生原酒の黒50はレベルが高かった。やはり個性のある肴には個性のある酒が合うのだろうか。箸も盃も止まらなくなる美味しさだ。
酒蔵の見学もさせて頂いたことがあったが、風情ある街並みに溶け込んだ立派な蔵だった。
近江龍門
美味しい純米酒のイメージは、仕事のできる割烹着姿の美人女将。
こちらはお客としてどーんと座っているだけで、心地よい空気の中全てがスムースにまわる。。
どのような料理も引き立てる優れた食中酒は主張しすぎない。
龍門はまさにそんな位置づけで、鮒ずし以外にも野菜の煮物や中トロの刺身、牡蠣のオイル漬け、数の子などありとあらゆる酒の肴に寄り添ってくれる素晴らしいお酒だ。
旭日
一方、優れた吟醸酒は、豪華な振袖をを着たお嬢様のイメージだ。それなりに気を遣わねばならないが、華やかな雰囲気にこちらまで気分が華やぐ。ハレの日の乾杯には相応しいし、酒器を選ぶのも楽しくなる、宴席の主役になるお酒だ。
藤居本家は新嘗祭の御新酒を宮中へ献上しているというありがたい蔵元だ。
写真の立春朝絞り純米吟醸生原酒は、立春の時期に日本名門酒会の加盟店のみで販売される限定酒で、毎年2月4日立春の未明に搾った新酒をその日のうちに飲み手のもとへと届け、春の始まりを共に祝おうという趣旨でつくられた酒であり、出荷前に神社でお祓いを受け1年間の無病息災、家内安全、商売繁盛を祈願した縁起酒でもある。新鮮な生原酒だけあり、味わいは透き通るようだ。私はフルーティーでフレッシュな香り高いこの酒を毎年楽しみにしている。
錦藍
このお酒は近江酒造の大吟醸 錦藍(きんらん)。立派な箱入りで義母から頂いたものだ。フルーティーでほんのり甘口でコクのある飲み口だ。冷蔵庫で保管して数日にわたり楽しんだが、日が経つごとに味わいが変化して面白かった。最終的には後味がすっきりとしてきて、そちらも好みだった。
一番おすすめの鮒ずしのお店
あゆの店きむら
冒頭に書いた感激した鮒ずしは、あゆの店きむらのものだ。HPでわかりやすく鮒ずしについて解説されているので一読をお勧めする。
スライスした状態でも売っているため開封して気軽に食べられる。一本物はより保存もきく。そして、これまで様々な鮒ずしを食べ比べてきたが、きむらさんの鮒ずしの味わいは上品で酸味がきつくないタイプだ。

- 価格: 17000 円
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こうしてまとめると、我が家ではありがたいことにいつも滋賀の母から鮒ずしも日本酒も譲って貰っているのだが、最近では二ゴロブナも少なくなってしまったこともあり、ただでさえ手間暇のかかる鮒ずしは高級になるばかりだ。素晴らしい郷土食なのだから、もっとたくさんの人に普及してほしい。
個人的には今後は鮒ずしに合うワインを探していきたいと思っている。
手始めに、滋賀のひとみワイナリーからだろうか。。